9月某日、「磯蔵新聞」編集部を、磯蔵酒造の磯良史会長の友人であり柔道家のAさんが興奮した様子で来訪。「私はデンマークから帰国したばかりだが、レストランで現地柔道家と会食をした際、デンマーク人の柔道家Bさんが用意してくれた日本酒が、『稲里』であり、たいへん驚いた」という。「磯蔵は輸出は止めたんじゃなかったのか?」─。
 同編集部は事の真相を確かめようと、今宵も千鳥足で帰宅した磯専務を直撃した。

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 同専務は既にこの話を聞いていたらしく、開口一番「この話は偶然が重なって起きた出来事」と笑顔。それによると、日本酒好きな東京在住のデンマーク人ツアーガイドCさんが磯蔵のWEBサイトを見たことに端を発するという。
 ある日、Cさんはデンマーク人の日本観光ツアーを担当し、客を笠間市内の陶芸体験施設に案内。その際、同施設に置いてあった磯蔵のパンフレットを見つけ、さらに以前、目にしていたに磯蔵のWEBサイトを思い出し、近いからちょっと寄ってみようとツアー客を磯蔵へ連れてきたという。
 当日、ツアー客の一人Dさんが土産にと「稲里」を購入。デンマークに帰ったDさんは日本の土産として、日本好きなデンマークの柔道家Bさんに「稲里」を渡した。
 早速「稲里」を飲んだBさんは「これは旨い」と気に入り、柔道仲間であり、近日デンマークに来るAさんを「稲里」で迎えようと、Dさんを通じてツアーガイドCさんに連絡、「稲里」を購入してもらい、これまたCさんのお客Eさんによってデンマークへ手荷物として「空輸」されたというのである。
 同専務は、「事情を知らないAさんは『なぜデンマークに稲里が?』とビックリしたって言うし、Bさんも『Aさんと稲里が友人』なんでビックリだと言うが、当蔵も偶然が重なった出来事に、当初は何がなんだか訳が分からなかった。おまけに、極秘輸出かなんて騒ぐ人もいるし…」と記者をジロリ。
 だが、「このことが縁になったのか、デンマークをはじめとする北欧の方が蔵に酒をお買い求めにいらっしゃる事が増え、なかでもデンマークではちょっとした(かなり局地的に)「稲里」ブームらしい」と嬉しそうに語った。

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 さらに専務は、真相が分かり帰ろうとする記者を引きとめ、「北欧の方々にいろいろな酒を試飲していただくと、最終的に1本2,000円〜5,000円という(当蔵では)比較的高額な酒を選ぶことが多い。つい『何故それにしたのですか?』とか『高いと感じますか?』などと聞いてしまうが、多分ワインと比較しているのでしょう『旨いものは高くて当たり前』などのお答えをいただきます。そのほかの国の方々も、大抵『SAKEは安い』と言います。 でも、国内の日本酒を飲む場としての飲食店での調査では『日本酒は高い』という。ちなみに当蔵の中で一番たくさん飲食店さんにご愛顧いただいている『稲里辛口』は一合原価160円程度。う〜む。日本酒は世界のアルコールと比べ高いのでしょうか? 安いのでしょうか?」とSAKEの価格の話へとエスカレート。
 続けて「先日テレビのニュース番組で新しく発売された日本酒の古酒の価格(720mlで25万円)について、牛丼何杯だとか、コシヒカリ何キロだとかやってましたが、10万、20万は当たり前、中にはウン千万円もあるというワインに比べればまだまだでしょう。もっともっと日本酒の幅が広がったほうがいい」と、酔いも手伝い絶口調。
 さらには「手前味噌かもしれませんが、日本酒は世界中のアルコールの中で一番手間の掛かる製造方法で、ましてや山田錦などを使った大吟醸酒等は、世界一原価が高い飲み物なのでは? と思うほど。葡萄を作ったことはありませんが、米を作るのだって同じで、土壌つくりをはじめ、気の遠くなるような手間暇が掛かっています」と何故か言い訳気味に話すので、記者が「値上げの前振りか」という質問を向けると、「いえいえ、当蔵は何気なくも大切な日本人の『日常』で頑張り続けたいと思っております」と、日常の酒「稲里」を豪快にあおりながらも、めずらしく真顔で答えていた。

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